ガイシの英語 3 そもそも中身ありますか?あなたの話

ガイシの英語シリーズ 第三弾は、「そもそも中身ありますか?あなたの話」という若干挑発的なタイトルにしてみました。
これ以前のコンテンツは、下記からどうぞ。

ガイシの英語1 このシリーズの当初目指した内容について書いてありますが、どんどんズレてきているような気がします…。

ガイシの英語2 「英語プレゼンにおけるスライドの作り方」

 このところ、英語を学ぼう本のトレンドは「発音重視」なのでしょうか?
新聞広告や書店の店頭を見ているとそれらが目に付きます。
Webの記事などを見ていても、発音がおかしいとネイティヴに馬鹿にされる・・・というような記事をちょくちょく見かけます。

私はちょっとこの見解に懐疑的です。

 今、グローバル企業と呼ばれる企業のエグゼクティブは欧米の白人ばかりではありません。
いわゆるノン・ネイティブスピーカーに会うことも非常に多いです。そして、発音はものすごく巻き巻きだったり、ぼそぼそで抑揚がなかったり・・・とかなり色々です。でも、それを理由に馬鹿にされているというような人はあまり見かけたことがありません。

アジアにおける外資系企業のトップも営業畑から上がってきた人が比較的多いようです。
大体の場合、営業から上がってきた人というのは英語がそれほど得意じゃないケースが見受けられます。
英語が得意な人よりもアジアのマーケットに強くて売り上げが上げられる人が優先で採用され、昇進していくわけです。

営業で流暢な英語が必要になるには、本社とのやり取りが増えてからということが多いので、ある程度上級幹部になるまでは、それほど多くありません。マーケティングや管理部門の人材のほうが本社部門との調整が多いため、むしろやり取りの頻度が高いです。
そのため、外資系トップだからと言っても必ずしも英語は決して発音がきれいではありませんし、流暢でもないことも多いようです。

自分の英語は発音が悪いから、聞いてもらえない…という人が結構いますが、私から見るとそれは英語以外の問題であるような気がします。

大きな原因は4つ

1. 声が小さい
2. 下を向いて用意したスクリプトをそのまま読み、表情やアイコンタクトがなく、どこが重要なのか分かり難い。
3. 早口である
4. 内容が無い

(1)〜(3)の問題というのは、すぐに改善できるのですが、自分の発音が悪いせいだと思い込んでいて、英語を喋らなくなるということがかなりの頻度で見受けられます。
海外旅行に行ったら、レストランで自分の英語で通じなかった、スターバックスやスーパーで英語が通じなかったというのも結構よく聞くのですが、これは(1)の声が小さいというのも結構あります。
スーパーの場合は、実は相手も英語がほとんど喋れない移民の人だった…というのもあります。

ひょっとしてこの3点にあてはまるかも…と思う方は以下の記事をぜひどうぞ。

English Plus 「今すぐできる!大きな声で話すだけで外国人に英語が2倍よく伝わる!?」

アメリカポスドクの歩き方 「通じる英語≠早く話す」 

ここで私が書きたいのは、(4)内容が無い…ために、話を聞いてもらえないケースです。
多分、これはかなり多いと思います。

確かにあなたの英語は発音が悪いかもしれませんし、文法もあやふやかもしれません…が、あなたがそのビジネスにおけるある種のスペシャリストであったり、豊富な実績があったり、もしくは政治力があったりすれば、相手はあなたの話に耳を傾けます。

 会議や打ち合わせの客席で、ニコニコしているばかりでほとんど発言がなく、英語がわかっているのかわかっていないのかよくわからず、何か尋ねても「上司と相談します」というような何も決定しない人であれば、相手も英語が不得意そうであるあなたとは話さず、話の通じる人、決定権のある人と話をしようと思うのは当然です。
だって、日本人同士で日本語でだってそうですよね。
いつまでも決定権のない人と交渉していたら、あなたの上司は必ずもっと上に人と会えるようにセッティングしろ・・・と言いますよね。

私は最初の外資系企業でプロダクトのLocalizationというのを担当していました。
ほとんど英語ができない時期です。
Localizationというのは、翻訳だけでなく、元になる製品なりコンテンツなりを日本に合うように最適化する仕事です(ローカルに合わせる…と言うとわかりやすいでしょうか?)。
翻訳だけであれば、元の原文を送ってもらって後は翻訳業者に手配してとプロセスをマネジメントすれば終わるのですが、Localizationということになると、本社にここはこうやって変えないと日本では受け入れられない…とか、いちいち本社の承認を取ったり、とにかく面倒くさいこと、細かいことが苦手な本社のアメリカ人達と結構交渉事がありました。

本社としては、どうして日本だけそんなにうるさく色々言ってくるのか…、というムードで、しかも私はさっぱり英語ができないので、英語ができない=仕事もできない…と思われていて(さすがにはっきりそう言われたことはないですが…)、多分頓珍漢な日本人だと思われていたと思います。
また、当時他の国はほとんど英語のまま製品もプロモーションのツールも使っていたので、なぜ日本だけそんなに予算をかけてLocalizationするのか…というのもあったと思います。
この時期は懇願しないとほとんど話を聞いてもらえませんでした。

まぁそんなこんなで1年半ぐらい過ぎると、本社全体の空気が変わってきて、やっぱりローカライズって必要かも…というのが結構出てきました。
そうすると、ローカライズ前提で製品を作るということになり、製品開発プロセスも変わってきたり、各地域でローカライズしたはずのものが全然うまくいかなかったり…と色んなケースが出てきて、そうなるとWorld Wideのその部署で唯一ローカライズを経験している私のところに、やたらにご意見頂戴…的な話が増えてきました。

私の英語力が入社当時に比べてレベルアップしていたわけではありません。
とにかくその話がわかるのは私しかいないので、私のよくわからない発音でもみんな聞き耳を傾けるしかなかったし、怪しげな文法の英文メールを解読するしかなかったのだと思います。

 で、思うのですが、きれいな発音ができるようになるのと、相手が話を聞きたがるような仕事ができるようになるのと、どっちが楽でしょうか?
私は断然後者なのです。
そして、発音だけ良くても相手の聞きたい話を持っていなければ、結局相手は聞く耳を持たないのではないか?と思うのです。
ものすごくクールなデザインのWebサイトでも、中のコンテンツに読むべきもの、見るべきものがなければ何度も訪れないのと同じように…。

 以下に、マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏のスピーチとパキスタンで女子が教育を受ける権利を訴えて武装勢力に頭を撃たれたマララ・ユスフザイさんのスピーチを動画を挙げておきます。
二人のスピーチは、どちらかと言うと聞き取り難いです。
ゲイツ氏はアメリカのシアトル出身ですが、彼の発音はかなり癖が強いようです。
でも、彼らの話は聞いてみたいと思いませんか?
そう思う人は多いと思います。だって彼らには、彼らにしか話せない内容がありますからね。

ビル・ゲイツ ハーバード大学卒業講演

マララさん(パキスタン)・国連スピーチ 日本語字幕つき

今回は、発音も大切だけれど、会話の中身はもっと大事だよね!という記事でした。

追伸_1 : 「ガイシの英語」なぜかアクセス数が多いので、カテゴリを別に作りました。全部まとめて読みたいという方は、ホーム画面右に「カテゴリー」から「ガイシの英語」をクリックしていただくと、一覧で表示されます。

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