講演「科学的エビデンスに基づいた本当に健康になれる食事」

「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」の著者であり、医療政策と医療経済の研究者である津川友介氏の講演を、慶應MCC夕学50講に聴きに行ってきました。
タイトルは、「科学的エビデンスに基づいた本当に健康になれる食事」。

<講演全体について>

講演の約70%は、「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」の内容で、残りの約30%が、その本では出てこなかった話、仕事の生産性と食事の話と超加工食品の話でした。
通常の夕学50講よりも15分短い、講演でしたがお話が非常にわかりやすく、プレゼンも明瞭で聴き応えのあるものでした。

先に結論めいたことを書いてしまいますが、人は食べたものでできていて、何を食べるかは毎日の小さな選択です。一回の食事の選択によって病気になったり健康になったりすることはありませんが、日々の積み重ねが私達の身体の状態を左右することは間違いないことです。
この選択を正しくするには、インチキな情報に騙されず、どうやって正しい知識を持つことができるのか?と、今現在の正しい食の知識とはどうなっているかを教えてくれる講演でした。

私はこの慶應MCCの講演はちょくちょく聴きにきているのですが、毎回質疑応答が始まると籍を立たれる聴衆者がいます。
私自身も、講演そのものがうーん‥という時には、立ってしまうことがあります。今回は質疑応答の前に出てしまった方は、だいぶ損したのでは?と思います。そのぐらい質疑応答も面白いものでした。

<講演の流れ>

エビデンスピラミッド

まず、本のタイトルになっている「科学的証明」という言葉の説明がありました。
食事と健康に関連する研究は、世界中で行われており、年間で約数100万の研究があるようですが、その中には当然信頼度が高いものがあれば、胡散臭いものもあります。
科学的根拠(エビデンス)がきちんとある‥と言えるものを信頼しましょう、見極めましょうというのは、津川先生の本も講演でも何度も強調されるものです。

このピラミッドは、以下のような順序で、信頼度が上がっていきます。

「個人の経験談、専門家のエビデンスにもとづかない意見」

「観察研究」

「ランダム化比較実験」

「メタアナリシス(複数のランダム化比較試験を統合したもの)」

情報の信頼度の高い、「メタアナリシス」であれば、この先5年〜10年はその情報が間違ってました‥という話にはならないが、その他のものは怪しい話も多いので、何かしらの健康情報について取り入れるかどうかを検討するときは、信頼度の情報が本当に高いものなのかどうかをよく考えてからにすることが重要とのことです。

本や情報などの場合、まず参考文献がきちんと掲載されていることが一つの目安になります。これはビジネス書なども同じことが言えますね。
参考文献の記載のないビジネス書は個人的に、御本人の体験談だけ‥というのが多い気がします。
今回配布されたプレゼン資料にも参考文献が調べられるように、研究者の名前と研究された年が記載されていました。

この辺りの話は、以下の記事によくまとまっています。
日経Gooday 30+ 「体に良い食品を見極めるコツ UCLA津川助教授に聞く 」

「科学的根拠(エビデンス)のあるものはどれ?」

講演は、「科学的根拠(エビデンス)のあるものはどれ?」ということで、以下の6つから順番に取り上げられて進められました。

1. 炭水化物は健康に悪く、食べると太る?

炭水化物は、白い炭水化物は健康に悪く、太りやすい。
一方で、茶色い炭水化物は健康に良いというのが正解です。

白い炭水化物:白米、うどん、精製された小麦で作られたパンやパスタなど

茶色い炭水化物:玄米、全粒粉のパンやパスタ、蕎麦(ただし、安い蕎麦は色が茶色くてもほとんど小麦粉+ちょっぴり蕎麦粉というのが実体)

私も津川先生の本を読んでから、白米よりも玄米を食べることを増やし、パスタは全粒粉に切り替えています。

この話で面白かったのは、日本人は農耕民族でずっと米を食べているから欧米人と違って白米も身体に良いとか、腸が長いというのは都市伝説のようなもので、そのようなことが証明された研究はなく、むしろ同じであるという研究結果のほうが多いのだとか…。

それから日本では糖質制限がとても流行っているけれど、アメリカではそんなことはない。ましてや糖質さえ食べなければ、肉はいくらでもOKみたいな話はまったくないということでした。
確かに糖質制限ダイエットは、肉はいくらでも‥という話はよく聞きますね。

2. ステーキは健康に良く、食べても太らない?

赤い肉(4本足の動物)は、動脈硬化や大腸がんのリスクを上げるというのは、かなり強いエビデンスがあるようですす。
また、それほど強くないエビデンスではありますが、太るという研究結果もあるようです。
ただし、食が細い高齢者や成長期の子供は赤い肉を食べることは重要なようです。

白い肉(鶏肉)は身体に良くも悪くないというニュートラルな位置づけ。
では、タンパク質はどう摂取するのがいいのか?というのは、魚・豆で取るのがもっとも身体によいそうです。
水銀の問題で魚を食べないほうがいい‥という話も聞こえてきたことがありますが、水銀の問題はゼロではないけれど、魚を食べることはそれを上回るメリットがあるそうです。

ちなみに加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコン)は、無添加のものや自家製のようなものでも発がん性があるのだとか、我が家は加工肉は塩分が強くて常備品から外したいなぁと思っていたのですが、それなりに常備してあると便利で、なかなか進まず。
こちらは常備品の量を減らす方向で、考えようと思います。
外で美味しい生ハムとかソーセージ食べたいし…。

肉については、私はもともと鶏肉派なのですが、ポチ(夫)が豚肉好き。自分が食事を作るときは、メインを魚か鶏肉にしようと思います。
魚は、そもそも毎朝の基本が焼き魚なのと、私が作れるレパートリーが少なくてなかなか出せないのですが…。

外食、友人との食事や仕事の会食では、これからも気にせずなんでも美味しくいただこうと思っています。
この後の話もそうですが、自分自身はあまり食生活を厳格にするつもりはなくてやれそうなところはやってみますか‥という程度ですね。

3. βカロテンやリコピンは健康に良い?

βカロテンは健康に悪い。リコピンは健康に良いというエビデンスはまだない。
緑黄色野菜に多く含まれるというβカロテン。
1970年代に緑黄色野菜を多く食べる人に、がん患者が少ないことから、βカロテンが癌の予防に有効では?と研究されましたが、1990年代にはむしろ肺がんリスクがあがあることと、心筋梗塞のリスクがあることがわかりました。

緑黄色野菜が身体に良いことは確かですが、βカロテンをサプリメントで摂取しようとすると、がんのリスクが上がるということです。
これは食材が大事なのであって、その中の栄養素だけ取り出してサプリメントとしてみると、思いがけない悪い結果を引き起こすことが多いということの一例です。

これに合わせて、マイケル・ポーラン氏と栄養至上主義(ニュートリショナリズム)の問題が紹介されました。
自宅に帰って調べてみると、このマイケル・ポーラン氏の著作がいずれも面白そうなので、どこかのタイミングで読んでみたいと思います。

4. 果汁100%のフルーツジュースは健康に良い?

加工されたフルーツジュースは、それが100%であっても糖尿病のリスクを上げ、一方で未加工の果物(ようはそのまま果物を食べること)は、糖尿病のリスクを下げるそうです。

以前から不思議なのですが、100%と書いてあるフルーツジュースを結構あちこちで見かけますが、まず果物だけだと、あんなに甘くならないと思うのと、そんなに日持ちしないと思うのですよね。
自宅でミキサーなどでやってみたら、ああはならないので、100%って何を表している数字なのだろう?と思っています。

5. 仕事の生産性を上げるには〇〇を食べると良い

ここからは、本に掲載されていなかったお話です。
脳に良いのは、果物と野菜で1日350〜400グラムを取るといいそうです。日本人はアメリカ人に比較して野菜を食べている人が多い一方で、果物を食べる人が少ないという話がありました。
私は、典型的にこのパターンで、野菜はかなり食べるけれど、果物はほとんど食べない。
買ってくるのが重いなぁ‥ということで、いつしか食べない習慣になってしまいました。
ここはこの機会に改めていこうと思います。

逆に生産性向上に良くないのは、前述の白い炭水化物。
これは血糖値ががーっと上がって、ガーッと下がるので低血糖になって頭が回らなくなります。
この血糖値の上下の件は、私も自覚していてガーッと上がって、ガーッと下がると、たくさん食べたはずなのに、猛烈にお腹が空くのです。
それと猛烈に眠くなります。
朝食が白米のときと、玄米のときとでは如実に違いが表れます。
この食欲を我慢すると結構な自制心を使ってしまうので、仕事にはかなり影響出ます。

【果物 vs チョコレート/スナック】

ちょっとショックだったのが、お菓子が精神状態に与える影響についての話です。
私も自宅で仕事をしていると、時に甘いものが欲しくなり、塩キャラメルのチョコレートを常備しています。
ダークチョコレートのほうが身体にいいというのは知っていましたが、まぁ自分ご褒美‥というか、甘いものは疲れた頭にとっても効く気がするので、ついつい。

・・・が、チョコレート/スナックというのは、「抑うつ」「疲労感」「精神的ストレス」を増加させるという研究結果が既に出されているようです。
これは鬱だから食べ過ぎるとかではなく、食べるとはっきりと悪い状態が出るという研究だとか…

うーん、これは、今の分が食べ終わったら撤廃ですねぇ。

逆に果物は精神状態に良い影響を与えるそうで、以下の全てに改善効果があるようです。

不安、抑うつ、身体能力、認知能力、疲労感、精神的ストレス

果物常備します…。

自制心とか意志力の話は、下記の本もとっても面白いです。
低血糖や、食事と意志力の関係などの話も出てきます。
Kindle版はなく、しかもどうも絶版ぽく、Amazonで5000円超えているようですので、図書館でぜひ。

6. 超加工食品は健康に悪い

「超加工食品」…、聞いただけで身体に悪そうな名称ですが、そのまま、病気のリスクが上がり、体重増につながるものです。

【「超加工食品」って何?】

  1. 大量生産でパッケージされたパン
  2. 炭酸飲料および加糖飲料
  3. 甘いあるいは塩味のきいたスナック菓子
  4. ミートボール・チキンナゲットなど塩以外の保存料(亜硝酸塩など)を加えて加工された再構成肉製品
  5. 即席麺、インスタントスープ
  6. 冷凍食品、常温保存可能な調理済み食品
  7. その他食品で、砂糖、油脂類、および料理に通常用いられない添加物(添加硬化油、加工デンプン、アイソレートプロティンなど)を主な原料とする食品

日本人の50%は加工食品を摂取しており、摂取頻度は高い順に、
出来合いの弁当・惣菜 > インスタント食品 > 冷凍食品 > ファーストフード となっているそうです。出来合いの惣菜はなんとなくインスタント食品より身体に良さそうなイメージがあるということと、手軽でそれなりに利用されているようですね。

興味深いのは、同じカロリーで超加工食品と低加工食品を食べるグループに分けでランダム実験を行うと、同じカロリー摂取量であっても、超加工食品の人は太るというのがわかっています。
なんかカロリーってあてにならない‥よなぁ‥というのは、日々の生活でも思っていましたがちゃんとエビデンスがあるようですね。

超加工食品について私自身の場合は、子供の頃からどういうわけかお惣菜嫌いなので、この辺りは大丈夫、それから冷凍食品は冷凍庫が狭いのと個人的には高いと思っているので買いません。
一方でインスタント食品は好きで即席麺は常備品、ファーストフードも好き(こちらはたまにですが‥)という感じです。
インスタント食品は、常備品から外して、ファーストフードはご褒美にしようと思います。

夫は、私と逆でお惣菜大好き、冷凍餃子大好きという人です。でもファーストフードもインスタント食品もほとんど食べない。
お互いに口出しすると揉めそうなので、どちらもそう頻繁に食べるわけでもないので、お愉しみ‥ということで許容しあうのが良さそうです。一緒に暮らすようになってから、お惣菜よりも自分で作ったほうが美味しくなってきたようですし。

<質疑応答>

以下は、質疑応答の内容と直接の回答ではないけれど、津川先生がお話された内容の備忘録です。
この辺りは、かなりメモと記憶がおぼろげなので、ご自身でも確認されてみてください。

朝ごはんについて

朝ごはんが三食の食事の中で、最も大切だと言われているが、そのようなエビデンスはない。
これはシリアル業界が流したマーケティング戦略。「忙しい時でも、朝ごはんは食事の中でもっとも重要だから、シリアル食べようね」という流れのようです。

スムージーについて

ブームになったスムージー身体に良さそうなイメージですが、結論としては全く同じ成分でも液体より固形で摂取するほうが良いそうです。これは胃の中の滞留時間が長いほうが身体に良いからということのようです。
スムージーもすごく荒く切って固形が残って未加工なほどよく、スーパーなどで売っているものについては、まぁ‥加工品などで‥ということのようです。

美容点滴/プラセンタなどについて

これは危険であるというエビデンスがはっきりあるようです。
そもそも血液に直接入れる点滴というのは、口から物を摂取するのと違い、有害フィルタのようなものが機能しないとのこと。口から物を入れると有害フィルタが身体の中で動き、有害なものをある程度除去することができるそうです。
点滴は必要最低限にしたほうが良さそうですね。

プロティンについて

プロティンについては、20年飲んでいる人というのはそもそもまだいないようなので、エビデンスとしてはっきり良い悪いがでていないようです。
海外輸入のものは、農薬が残っていることが多いという危険性はありそう、また、とにかく砂糖の量がものすごく多いので、その時点で身体によくないことははっきりしているようですので、意識してタンパク質を取りたいという人は、大豆のほうがずっと身体にいいそうです。
まぁ、身体に良さそうにはそもそも見えませんが…。

食材は生で食べるほうが身体に良いのか?

よく耳にする身体にいいと言われるローフード(Raw(生の)Food(食べ物))ですが、 生で食べることにより、植物の酵素や栄養素を効果的(効率的?)に採れると聞きますが、火について特に気にする必要はないというエビデンスが出ているようです。
また、赤い肉については火を通し過ぎて焦げたりするのは駄目かも‥というエビデンスはあるようです。
但し、妊婦さんについては免疫力の低下ということから、食事から感染することもなくはないようですのでこちらの注意とは別の注意が必要なようです。
その辺りについては、津川先生の以下の記事にまとめられています。

「妊娠中の女性にとっての「究極の食事」

コーヒーについて

コーヒーについては、健康に良いというエビデンスが少数ではあるが出てきているようです。
日本人の場合は、コーヒーを飲むといっても、多い人で1日5杯程度なので、気にせずに良さそうです。
但し、砂糖と牛乳はなしで‥ということでした。

<そして私はどう食生活を改善するのか>

まず、日々の食事で太るのは嫌だなぁというのがあります。ひどくダイエットに苦労した経験があります。その話とその時のダイエットについては、以下にまとめてあります。

面白くもおかしくもないダイエットの話(前編)

面白くもおかしくもないダイエットの話 後編

後編の記事にまとめていますが、結構それ以来気をつけていますが、年齢が上がるに連れてやっぱり維持が難しいので、この辺りは日々の食生活でなんとかしたいです。
とは言え、赤い肉を一切やめようとか、ここには書きませんでしたが津川先生の本に出てくる身体に良くないという言われる、バター、マヨネーズを一切やめようなどと毛頭考えませんし、人と食事をするときは白い炭水化物も躊躇なく食べようと思っています。
そのために自宅の食事はできるだけ、ここで教わったちゃんとしたものにしようと思います。

【やってみます!】

  1.  常備してある冷凍うどんとインスタントラーメンの撤廃。
    これはお腹が空いた時に、急いで食べたくて常備しているのですが、玄米のご飯の冷凍を切らさなければ良いような気がしてきました。
  2.  常備してあるチョコレートを撤廃し、甘いものは果物へ切り替え。
    これは近所のスーパーで見切り品の果物を買うと、安くて熟しているというのがわかりました。果物を買わない一つの理由に迷ってしまって、決断力を使ってしまうというのが実はあったようですが、見切り品の場合、選択肢が少ないので買いやすくなりました。
  3.  小腹が空いたときように、素焼きのナッツを持ち歩く。
    これはすぐ手元に置くところが多分大事ですので、早速買いました。
  4.  原則、玄米を食べる。白米は緊急時のみ。
    もともと玄米は食べているのですが、玄米は長い浸水時間が必要なことと、我が家は炊飯器がなく土鍋で炊いているため、時間も白米よりかなりかかり、さらに吹きこぼれもすごくその後の始末にも時間がかかります。
    そのため、急いでいる日などは、ついつい白米になってしまっていたのですが、白米はお刺身と食べたいとき(ここはやっぱり白米が美味しいので)と、前日研ぐのをいた場合などのみとしようと思います。
  5.  外で飲み物を買うときは、無糖のみ
    基本的に、お茶ぐらいしか買わないし、そもそも飲み物持って出ることも多いのであまり買わないのですが、時々冬場にミルクティとかココアとか買ってます。あとは二日酔いのときのポカリスエットですね。このあたりはすぐ実現できそうです。
  6.  自宅ランチは、果物も一緒に。
    フリーランスのため、自宅でランチをすることはかなり多いので、これはそう難しくなさそうです。自宅ランチはそもそも玄米か全粒粉パスタが多いので、そこに果物を加える感じです。
  7.  お魚料理のレパートリーを増やす。
    これが、一番難しい気がします。ちょっと計画と目標をきちんと立てないと無理かな。

こういったことを実現するのに、最も大切なのは、私の場合は日々の暮らしで疲れきらない‥ということなんだと思います。
疲れてしまうと外食増えるし、インスタント食品食べたくなるし、心身ともに身体に良くないものを欲しがってしまうのを自覚しています。
このあたりは、仕事の詰め込み過ぎを避けて、運動を怠らず、ボーっとする時間も確保する‥ということでしょう。

<津川先生について>

講演者の津川先生はブログやTwitterで情報を発信されていますので、よろしければぜひそちらも。

ブログ「医療政策学×医療経済学

Tiwtter:https://twitter.com/yusuke_tsugawa

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