初めて読んだ上野千鶴子の本は、「スカートの下の劇場」 だった。
その当時まで私は、本というのは小説もしくは文学の類しか読んだことがなかった。
そんな話をどこかでしたら、当時、派遣先の上司だった方が、それ以外にも世の中には楽しい本は山ほどあるんだよ・・・・と、貸してくれたこの本だった。
今、考えると初めて読ませる相手に推薦する本としては、なかなか刺激的な本である。
でも、私はこの1冊から、本の世界は広い・・・・と言うことを認識して、そこから本屋にあるすべての本棚が私の本棚になった。
上野千鶴子と言えば、過激で喧嘩の強いフェミニストのイメージがとにかく強い。
そんなイメージは、このエッセイを読むとはらはらと崩されていく。
このエッセイの中の上野先生は、やわらかく、繊細で、感受性が豊かな本当に素敵な大人の女性だ。
「人は一人で生きていかなくてはいかない」なんて喝を入れられるイメージがある上野先生だけれど、彼女はあくまで「自分はひとりでいることを選んだ」と言っている。
そうして、一人でいることの楽しみ方を十二分に知り尽くした上で、人と過ごす豊かさを心から楽しんでいるのである。
上質の大人の女性のエッセイを久しぶりに読んだ。
上野先生をよくご存知の人にも、まったく知らないという人にも、ゆっくりページをめくって楽しんでほしい本である。
わたしは研究者だから、「考えたことは売りますが、感じたことは売りません」とこれまで言ってきた。本を読んで実物に会ったら、「イメージがちがいすぎる」とも言われた。あたりまえである。研究の成果はわたしの一面でしかない。この本のなかでわたしは禁を犯して感じたことを語りすぎたかもしれない。これもまたわたしのべつの一面である」
(「あとがき」より)
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