ふとカレンダーを見ようと思ったら、カレンダーの日付のところに、精算箱が置いてある。 この箱は、家計から精算してほしい買い物のレシートを夫が入れておく箱だ。
夫がこの箱を使うと、なぜかいつもカレンダーを隠してしまったり、その隣の目覚し時計(鳥の声で起こしてくれる、私のお気に入り)を見えない位置に置いてしまうのだ。
そのたびに、気が利かないなぁ…といつも思うし、時には口に出して言うこともある。 もちろん、彼は馬耳東風だから、毎回繰り返される。
ふと思い出した。
私は子どもの頃から、よく「yoshikooは、気が利かないなぁ‥」と言われていた。
あまりよく憶えていないのだけれど、多分、父親に言われたのだと思う。
我が家は父親が酒呑みで、さらに人を自宅に人を呼んで呑むのが好きという人で、しょっちゅうご近所の人が出入りしていた。
そういったお客さんのいる前で、気が利かない、と注意された。
父親は社交的でアイデアが豊富でサービス精神が旺盛な人だった。
そういう人の常として、気が利く人でもあったのかもしれない。
よく憶えていないけれど。
だから、しっかりしていそうで、実態はそうでもない長女の気が利かない場面を見るたびに、そう言っていたのだろう。
お客様の前で親がちゃんと躾をしているというのも見せたかったのかもしれない。
その言葉の後ろには「女の子なのに‥」というのもあったのだと今ならわかる。
気が利かない長女は、父親の小言にも関わらず、そのまま大人になった。
居酒屋などで料理の取り分けをしたり、まとめてある皿や箸を周囲の人に配らない。
周囲の人のグラスが空になっても飲み物をつがない‥、
まだ到着していない人のおかずを別皿に取っておいたりしない
‥といったことで、学生時代もまたしょっちゅう気が利かないと言われた。
あとで考えると、そういうこと言われる場面では、必ず男性がいた気がする。 男性が私の気の利かなさを指摘するケースもあれば、女性が男性の前で指摘するケースもあった。
思うに暗黙の了解として、「気が利く」というのは、世間では『女の常識』ということなんだろう。
そう考えると、夫が気が利かないというのも、まぁそうだろうな‥と思う。
男性に気が利くことを求める人が圧倒的に少ないような気がする。
女性だったら、できて当たり前。
男性だったら、できたら褒められる。
別に女性だから気が利くわけではない。
そういう風にうるさく言われるから、面倒だからちゃんとするようになるんじゃないかと思う。
あまり色々と言われるのも面倒なので、そこそこのことは大人になったらするようになった。
上に書いたようなこともやるようになったし、それ以外にも
複数人で食事をするときは、幹事のお会計がめんどうにならないように細かいお金を用意していく。
遅れて来る人がいるときには、冷めたら美味しくないものはその人が来るのを待ってから頼む。
職場へのお土産は個包装になっていて、日持ちするものを持っていく
こんなの男性だったら、注意されることもないんだろうな‥と思う。
ステレオタイプの偏見だの、男女差別だの、ジェンダーの問題だの‥とごちゃごちゃ言う気はないんだけど、こうして書き出してみると「(女性なのに)気が利かない」って言われることに、心のなかに小さな引っかき傷みたいなものがついていただんだろうな‥とは思う。
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