生誕110年 香月泰男展 @神奈川県立近代美術館葉山

9月の3連休に、神奈川県立近代美術館葉山で、「生誕110年 香月泰男展」と彼に関わりのある画家たちの作品を集めたコレクション展「内なる風景」を母と一緒に観に行ってきました。

神奈川県立近代美術館葉山は自宅からバスで行ける距離にあり、以前から行ってみたいと思っていたのですが、香月泰男と言えば、戦争画家というイメージで、暗い、もしくは反戦メッセージの強い画家という印象を持っっていたため、別の展覧会で行こうかな?目論んでいたのですが、ちょうど東京から母がやってきたので、一緒に訪れてみることにしてみました。

「生誕110年 香月泰男展」

こちらは、年代別に4つのパートに分かれていました。
以下、パートごとに印象に残っている作品についてバラバラと書いていきます。

Ⅰ 1931-49 遮光のなかのファンタジー

20代から30代の頃に描かれた作品を集めたこのパートでは、はっきりした太い線を使った絵が多く、力強さと素朴さを感じました。(「猫」「雨<牛>」など)
この時期の絵に使われているブルーはとても美しいものが多かったです。(「水浴」他)

一方で、「水鏡」など絵に登場する少年は顔がないものがほとんどで、厳格な祖父に育てられたというこの方の生育環境が表れているのかもしれません。

その祖父を描いた「祖父」というタイトルの絵。実際の彼の祖父にどのぐらい近いものかはわかりませんが、このように見えていたのだなというのがよくわかります。
威厳のある昔ながらの日本男性という印象でした。子供の目で見ると、きっと怖い方だったのでしょう。

Ⅱ 1950-58 新たな造形をもとめて

「ハムとトマト」のように明るく伸び伸びとした印象の絵もあれば、

いろいろなことを試していた時期なのだなと思わせる「電車の中の手」のような作品もありました。

私自身は「うなぎ」という作品がと画家のユーモラスな面を感じて気に入りました。この画家にもまた、楽しい時期ももちろんあったのだというのがなんだかホッとするのだと思います。

Ⅲ 1959-68  シベリアシリーズの画家

この人の作品の独特の「黒」の色は木炭を混ぜて出しているということを初めて知りました。作品の全体イメージがとにかく黒いです。
このあたりの展示から、戦争に関するものがほとんどになっていきます。この画家の代表作と呼ばれるものが集まっている印象です。

彼の絵から反戦メッセージを読み取る人も多いのでしょうが、私には彼は自分の中の戦争と決着をつけ、なんとかそれを消化あるいは昇華させるために描かれた絵のように感じました。あくまでも自分のための絵。特に「朝陽」「私<マホルカ>など。

暗い絵ばかりでなく「駄々子」「父と子」のような、身近な人を主題とする温かい作品もあり、この時期の彼が暗い思いばかりに囚われていたのではないことに少しホッとしたりしました。

Ⅳ 1969-74 新たな展開の予感

私自身はシベリアシリーズよりも、むしろこちらの「朕」や「奉天」「点呼」に反戦メッセージを感じました。戦争反対というよりも、戦争というもののバカバカしさを当事者というよりもずっと冷めた視線で描いている気がします。

彼が敗戦を知ってから、日本に帰国するまでの時間の長さを館内のパネルから知り、びっくりしました。終戦1945年という年表は頭に入っていても、そこから本国に戻るまで数年かかる‥。そう考えると1945年というのは単なる数字で、その人にとっての終戦は人それぞれなんだという当たり前のことに気づかされました。

戦後の1970年代の作品には「四重奏」「聖堂」など明るい作品もありました。

コレクション展「内なる風景」

今回の香月泰男展覧会とともに、彼に関連する画家や同時代にシベリアに抑留されていた画家の作品などが展示されていました。
梅原龍三郎の作品「椿」「熱海野島別荘」があり驚きましたが、香月泰男は梅原の画風に惹かれていた時期があったそうです。初期の絵の線が太いところぐらいしか、私には残念ながらその影響はわかりませんでしたが…。

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