原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち

友人の紹介で、映画「原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち」を知り、逗子唯一の映画館でもある我が家から徒歩圏内のシネマアミーゴさんに行ってまいりました。

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なんというかこう、タイトルが「はいはい、原発反対って映画でしょ」って感じで食わず嫌いされちゃいそうですが、それ以外の部分がかなり面白いのです。
で、それ以外の部分を自分の備忘録として書いておきたく、この記事を書いています。

ちなみに私の原発稼働に対するスタンスは、以下のようなものです(わりと大半の日本人がこの手のなのではないかと自分では思っています)

・原子力発電に伴う高レベル放射性廃棄物が発生の処理問題がきちんと解決しないとだめなのではないか?
・原子力発電がCO2を吐き出さないクリーンエネルギーだという話はあるけれど、危険性が高すぎる、原子力発電そのものの是非というよりも、今の日本の政治家にそんな危険なものをちゃんと管理しきれるとは思えない(これは憲法改正も同じスタンス、憲法改正NOというよりも、今の政治体制でやったら危ないだけだろう・・と)
・とはいえ、国はどうやっても動かしたいのだろうから、結局動かしちゃうんだろう、電気代上がるのも実際辛いしね・・

ネタバレっぽいのありますので、知りたくな方はここで読むのをストップ。

シンプルな理論構成

この映画の主人公である樋口元裁判官の出した判決がものすごくシンプルでわかりやすいから、電力会社が負けてしまうというのがビジネスの場面でも参考になります。

・原発の耐震性の根拠がテキトーすぎる(将来の大地震だけでなく、現時点で頻発している地震にも対応できない状態)。
そもそも原子力規制委員会が認可している数字ですら、三井ホーム、住友林業と行ったハウスメーカーより低い(おいおい…)

・原発はクリーンエネルギーというが、東北の震災で福島原発事故は、一番ひどい被害からはか奇跡的に免れたけれど、日本の歴史上最も大きな公害問題

・経済活動と人の命はどっちが大事?当然、人の命だよね…比較するのもおかしいよね。

こういう風にシンプルに議論を基本のところからハズさない・・のって、すごく大切。

電力会社側は、裁判所にものすごく難しい数字の話とか科学的な話をして技術論に持ち込む(私も仕事上では結構そういうのやっていたりするので、すごくよくわかる)、裁判官はとっても忙しいし、そもそも文系なのでよくわからない、だから原子力規制委員会が認可しているから大丈夫なんでしょう・・となって、原発稼働を認めてしまうという流れを止めたのが、この樋口元裁判官。

こんなこといってはなんですが、「うまいな」と思いましたよ、私。
取引先との交渉でも、社内政治でも他人の得意な土俵に乗せられちゃだめなんですよ、この手の議論。
そうなりそうになったら、基本に立ち戻る、わかりやすくする。
わかりやすくすると、周囲に対しても説得力が上がるし、相手の土俵で戦わなくて済むということになるわけで、本来これは原告側の弁護士さんがそうしていればよかったって話でもある気がします。

逆襲弁護士:河合弘之という凄キャラ

河合弘之氏のウィキペディアhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%B3%E5%90%88%E5%BC%98%E4%B9%8B

樋口元裁判官と話をしているオフィスの壁に掛かっている絵が、あれ本物だとしたらとんでもない金額では?、そしてちらりと映る冷蔵庫というかワインクーラーにあるの、あれ、モエのシャンパンでは?と…。そしてこの弁護士さんものすごくお金のかかった身なりだよね…と

原発訴訟の中心になって活動している弁護士さんにしては、ちょっとイメージが・・と、ずっと気になりながら観ていたのですが、この河合弁護士は、世間をゆるがす経済事件でがんがん勝訴を勝ち取っている方だとか。

ガンガン勝ってきた俺様が、原発訴訟で負けてばっかりなんてプライドが許さん!という姿勢も人間味があって、素敵。

こちらのこれまでの事件集見ても、なんて興味深い人物!
河合弘之氏が担当した注目事件はこちら。http://lawyer-kawai.com/cases

本も出ているそうで、めちゃくちゃ読みたくなってしまいました。

原発反対運動=手弁当、貧乏みたいな漠然と持っているイメージをひっくり返してくれました。

太陽光発電と中国の話

先日、Twitterを眺めていると小池百合子都知事が太陽光パネルの設置を義務化・・という話が流れてきて、「そうなの?」と思って眺めていたのですが、その反対派のTweetに、「中国に金を垂れ流すのか・・」というような話が多く、「なぜ中国?」と思っていたら、今、中国の太陽光発電の技術力は世界で断トツのトップだということをこの映画で初めて知りました。
以前は日本がトップだったそうですが、大きく引き離されているのだとか。
映画の中では、HUAWEIの映像が出ていましたが、HUAWEIってこういうのもやっているんだーと、驚きました。

太陽光発電については、イメージとして平らな広い地面にわーっと引き詰めてあるイメージでしたが、現在はパネルがそれほど大きくなくて、その下に農作物を植えることができ、それが少しも日光を遮らないことや、また表面から太陽の光を吸収するだけでなく、裏側からも吸収できるそうで、福島では雪が数センチ畑に積もると雪で光が反射して、両面から太陽光ができるとかがわかりやすくセ説明されていて、へーっとなりました。
こういうのって、文章で読んでもピンとこないのですが、映像の力は大きいですね。腹落ち感が違う。

映像の力

弁護士さんのオフィスの映像から読み取れるリッチな感じとか、太陽光発電のパネルのイメージしやすさとか、上記にも書きましたが映像の力ってすごいなと改めて思いました。
樋口元裁判官は定年後、全国のあちこちで原発の危険性を訴える講演を行っており、その講演会場の席は満席なんていうことはほとんどなくて、かなり空席が目立ちます。スーツと言うよりも背広という言葉がふさわしい白髪姿で、キャリーバッグを引いて歩く姿は、それだけでとても地道な活動であることが伝わってきます。

福島原子力発電所の問題は、最悪の事態はこうなります…と、当時の総理大臣であった菅直人氏に専門の研究者から出された資料。その資料のPower Pointのテンプレートが「おお、懐かしい」と思うぐらい古いもので、それだけであの震災から随分と時間が経っていることを感じました。
こういうのって映像じゃないとできないよなぁ…と改めて映像の力を実感しました。

ちなみに、一番恐れていた大惨事が起こらなかったのは、あってはならないミスのため奇跡的なものだったというのも、この映画で初めて知りました(ここはぜひ映画を観てほしい)

後半に出てくる環境エネルギー政策研究所(ISEP : Institute for Sustainable Energy Policies)のホワイトボードに描かれているビジュアルマップもマインドマップ・プラクティショナーのワタシ的にはかなり萌えました。

<映画について>

原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち公式サイト:http://saibancho-movie.com/

映画を見終わって、当初抱いていたスタンスから大きく変わったというのはないのですが、自分がこれまで思っていた以上に原発政策って杜撰だったのか・・というのと、代替エネルギーってここまで進んでいたのか・・だったら、原発を止めるってそう夢物語でもないのかな…と理解し、この問題に以前よりも感心を持つようになりました。

本を読むよりも、漫画や動画でざっくり理解してから興味があればもっと学ぶというスタイルがだいぶ定着してきた昨今ですが、原発問題や代替エネルギーを考えるのに賛成・反対はともかく、一度この映画を観てみるのはありだと思います。
なんていうか、大人の教養としておさえておきたい感じです、このあたり。

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    2006.11.09

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