第18回のサードプレイスを2022年9月3日(土)にオンラインで開催しました。
今回は新規2名の方に参加いただき、全部で8名の参加者となりました。
冒頭から、積読本のいきなりはやめようという反省の話からスタート。
今回は主催者2人とも、自身の積ん読本を片付けたい!という気持ちから、まだ読んでいない本を課題本を選択してしまいました(2022年はこのパターンが多かった)
読んでみたところ、文章は読みやすいものの、咀嚼難しく‥というタイプの本で、1冊まとめて2時間で語るのは無理。数回に分けて開催すべきだったーとあとから気づいたのでした。そして冒頭の謝罪へ
課題本と著者について
著者 平尾 昌宏
著者のTwitter @HiraoM
この本の紹介記事はこちら
「道徳的混乱を解決してゆく 平尾昌宏『ふだんづかいの倫理学』より」
自己紹介
自己紹介では、通常の自己紹介の他に以下のようなことを各自にお話していただきました。
・サードプレイスの中で呼ばれたいお名前のご紹介*
・「今回の課題本をどのぐらい読みましたか?」**
・「本の中で一番印象に残ったことはなんですか?」
*サードプレイスでは、好きな名前を名乗っていただくことになっています。
**読了されていない方がも楽しめるような進行を‥という目的で、うかがっている質問です。
・4割ぐらい読んできました。読んでみて、自分の今までの人生で「正義」という言葉に自分はかなり影響を受けてきたということを再認識。その「正義」と「倫理」の関係が興味深いです。
・半分ぐらい読んできた。
・一通り読み終わったけれど、読書会前に読み終わってしまって、うろ覚えかも。漫画好き、漫画の例がわかりやすい。デスノート、ウロボロス、「正義」彼らのいう正義って極端?
倫理の観点から当てはめるというのが面白かった。
・早い段階で一度読み、直前から読み、読んでは寝て読んでは寝て、つまみ読みという感じ。
・半分ぐらい読んだ。パートゼロの倫理が何に役立つのか‥という話が印象に残った。
・74%読んだ。漫画好きなので、デスノートとかうれしかった。サンデルの公共哲学では事例がわかりにくかったけれど、この本はその点わかりやすかった。
・付録2つ以外は読めた。社会、個人、人間関係をまず3つに分けるというのがすごく役に立つ気がした。
・全部読み終わったような読み終わっていないような、マイケル・サンデルの会ですごく彼が偏っているように感じていたので、今回の本を読んでそのあたりがなぜかというのが見えてきた気がする。
読書会本編
自己紹介の後は、2つのルームに分かれて、今回の本を読んでみて感じたことをそれぞれにご発言いただきました。
今回、すごく意見交換が活発で、どれも取り上げたいのですが、網羅しきれない上に、文章としてまとめるのもとても難しいので、ざーっと以下にご紹介しています。
Room A
こちらのお部屋では、本に出てくる総まとめの図を参照しながら、あれ?このケースはどうなる?といった現実じ起こっている様々な問題と引き合わせてのディスカッションが中心でした。
- 正義の概念が一般的じゃない、調整は一般的だと思うけれど、分配と交換は正義と言われると違和感がある、倫理特有かなと思って印象的だった。
分配(経済)はなぜ正義? 「釣り合い」が必要だから。悪いことをしたらバツを受ける。受けないと秩序が守れない。お前のものは俺のもの、俺のものは俺のモノはダメ。 - 自分の倫理というのは多分自分なりにみんな確立している。それぞれの倫理はみんなバラバラ、それらの微調整と折り合いの具体的な例がこの本にはたくさん出ていて面白い。
- 正義の相互性。ジャイアンの話。
自分がそうなら、相手のそれも認めなくてはならない。読めば当たり前だけれど、本当にそうなっているか‥。 - 不倫はなぜ叩かれるのだろうか?
「平和な社会を揺るがす(婚姻制度の崩壊)から?」「配偶者を裏切っているから?」不倫に対する意見を考える時、この表の社会の話、身近な関係の話、個人の話のどれかに落とし込んで考えると様々な切り口が出てくる。 - 身近な関係の「愛」の括りがちょっと雑なような気がした。夫婦には縦の関係になってしまうとか、生活のために愛はないけれど夫婦でいるとかもある気がする。
- 本の中の「不確定義務」「超義務」言葉として入ってきにくく読みにくい、入りにくい印象があった。言葉の設定で見えやすくなったものもあれば、見えにくくなったものもある。
- ビーガンの子育てで子供が亡くなった話 子供の権利と親の信条がぶつかったときにどちらが優先されるべきか。子供は親を見て育つ、真似ちゃう。社会がその常識とは限らないという問題がある。児童虐待をどこまで施設が介入するのは良いのかなど、信頼関係とか社会の常識とかの微妙なラインがあるものは法の整備とか難しい。「調整」が必要になってくる。「命の確保」は一つの判断基準。
- 統一教会と政治の話など、本当に政治家がその宗教を信じているのなら、それを攻めるのはおかしな話。
- この表のパターンは原則的なもの。基本的には相互性が基盤になっている(Aさんが認められるなら、Bさんも認められる‥)、親子関係や宗教が入ってくると難しくなる。
- 子どもの選択の権利をどう残すか。カトリックの幼児洗礼は受けるが、その後に12〜13歳に再度自分で選べる、選択の自由を残すやり方を取り入れている
- 宗教も入ってくるとますます切り分けが難しいので、パターンをつくって当てはめるのは難しいが、例外を考える上でもこういうまとめがあると、議論を行いやすい気もする。
- 斜めの関係、親戚のおじさん、おばさん、ご近所など。もっと広がると良い気がする。斜めの関係っていい気がする。世の中風通しよくなりそう。一方で安全のために、知らない人には挨拶しないなどの雰囲気もあり、斜めの関係を作りにくい。よく知らない人=怖い、関わらないみたいな感じ、何かあったらどうしよう。
全体に正義についての話が多いのは、愛・自由に関しては人と話したり、自分なりに考えることが多いけれど、正義について考える機会がないからかもしれません。(本の前半がこれだったというのも大いにあるけれど)
今回は、この部分がよくわからなかった、ピンとこなかった…というのを、他の参加者が、あ、自分もそこはわからなかったとか、そこはこういう意味かと思ったというようなご意見が多かったです。
Room B
- 本を読んでみていろんなことを深く考えずに生きてきたことに気がついた。ざっくりした感じで生きてきて、総論で考え、各論を考えていなかった気がする。
- 個人的な見解としては、誰が何をしても人の命を奪うのはなしかな。デスノートは世の中をよくするという大義名分があった。良いか悪いかは別。
ウロボロスは、警察がひどいことをして、それを恨んで復讐、身近な関係の愛に他する正義という点がデスノートの違い - 道徳は小学校で全員習ったのに、倫理って高校でいきなり選択科目なのはなぜ?
そもそもあの道徳の授業は、自分たちの道徳の形成にどう影響したか - 道徳の授業といえば、NHKの番組を見る。主人公小学生。個人と身近な人を超えて、考えるってなかなかそういう意識がないかも。
- 道徳の時間の活用法は地域性があるようだ。自分の地域では同和問題、在日問題について、人権週間の時期は詩や作文を提出させられた。地域的にも戦争なども繰り返し語られた。被爆者差別など、公害、水俣問題、カネミ油症事件の話など、社会正義を刷り込まれた印象が残っている。
- 道徳の授業、空気を読む力、同調圧力。これが正しい…みたいな空気。ディスカッションなし。この本みたいに、これをどう思いますか?などのほうが良いと思う。
- 総合の学習でディベートがあった。
お互いの意見をぶつけあっただけ。自分が正しいという前提で話すので、解決策ではなく、馴染めなかった。倫理はお互いの関係性の話、戦うのも大事、批判を恐れない、でもなんのために、目的が共有されていないと意味がないのでは? - 死刑がないヨーロッパ、死刑がある国とどう違うのか?明確な答えはない。私達が社会をみて、見つけなくてはならない。問題を見やすくはするけれど、その問題をどう取り扱うについてはより意識を深めなくてはなならない(倫理ではないかも?)
議論を深めることはできるが、そこからどう選択するか - ゴールではなく、ゴールに向かうための道具かな?
- 目的の共有。ディベートは言いくるめたほうが勝ちのようなイメージ。相互理解がなくては、そもそも相手のロジックを崩せない、相互理解をディベートの目的にするのが良いのでは?
答えを求めたい、着地させたい、それぞれの立場を理解して結論を出すというのがこれからの世界では求められるのかな。 - ある問題を見つけて、それは私にとっては許せない(SNS,メディア)。これが個人の問題ではなく、社会の問題になってしまう。良い面もあるハラスメント問題などがみんなの問題として取り上げられるようになった。
- 在日問題など、かなり長い期間ずっと身近な場所にいるのはどういうことか?国籍がないってどういうこと?理解を深めたのちに、どういう社会を作りたいかの話がある。どういう問題がある?どこまで話す?そして何を目指す?全部地続き。話し方のリテラシーも必要。倫理「意識」があるだけではだめ。哲学対話とかなど限られた場でしか、この手の話ができない気がする。
- 各論になるほど、よく知らないから‥と問題が遠くにしてしまう気がする。山頂にのぼるには色んな登り方がある。登り方決まっていないから、途中で遭難してしまう?
- 日本人って村社会なのに、個人主義も求めている。
中華系は家族社会、密度高い。親が子についてTweetしたりでプライバシー侵害などで揉めている、日本。
中国では親の不正を子どもはかばうべきという考えが浸透している。歴史的に施政者が変わったら全部代わるから、身内しか信用しない? - 日本は自然が災害が多いのでリーダーを必要として、上の云うことをよく聞く?欧米よりも。
この部屋では、対話の目的や目的を果たすための対話のルールや対話のリテラシーみたいなところまで話が深まりました。SNSが対話になりにくいのは対話のリテラシーにかなり差があり、ルールが形式知でも暗黙知でもまだ出てきていないところにもありそうです。
参加者の感想
・倫理に触れたことがなく、軽い気持ちで参加してみた。皇室問題、道徳、ノマドランドの映画、など色んな話が出て面白かった。これを機会に倫理についてもう少し学んでみたいと思えた
・みんなで話して、SNSや斜めの人間関係などリアルな問題にからめてこの本の内容を考えると面白かった。
・読み終えずに参加。倫理学ってルールが多くて苦しくなる学問かと思っていたけれど、ルールを知ることで自由になることをこの本と読書会で知った(
・ブレイクアウトルームでは、実社会で倫理学ってどう使うんだろう?という話が多かった。分類はわかりやすいけれど、微妙に当てはまらないとか、分類を横断しないとなあと思うことが多かった。
・ブレイクアウトルームでは、学問の話と云うよりもリアル社会の話が多かった。「ふだんづかい・・」というタイトルにあっていた。みんなが見ている社会って本当に同じなのか?というのを話しながら考えた。同和や在日の話などは、地域に地域差もあったり共有されていない部分もあるが、倫理という言葉を使うと同じテーブルにつくことができるかも。
・今の自分には難しいお題の本だったけれど、みんなで話すことで、色々と考えることができて、さらに読み返して勉強したくなった。
・小学校の道徳の教育ってどんなのだったっけ?問題だけ投げて、答えはないという話が出たり、デスノートの正義の話とか、ディベートが達成できることってなんだろう?という話など多岐にわたっての話題が多く楽しかった。
ものを考える道具が倫理なのかな?と感じた。「自分は関係ない」ではなく、「言わなくてはいけない」などの判断に使えそう。
・一見、この本の表で色々と分けられるのだけれど、突っ込んでリアルなケースを考えると表では割り切れない部分が多く、そのあたりが逆に面白かった。
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