コーチングって何?

千代田線に向かう地下鉄構内で、ほんの数メートル先に4歳ぐらいの男の子と、さらに小さな男の子をベビーカーで連れたお母さんが歩いていた。

男の子が「お母さん、これ食べていいでしょー」と手元に抱えている袋を見せる。お母さんはちょっと振り返って、「だめよ。もうすぐホームに着くから、そうしたらベンチに座って食べていいよ」ときっぱり。
男の子は憮然として、「やだー、やだー、いますぐー、いっこだけ」と騒ぎ、袋を振り回すと、袋の中から私の足元に何かがとんできた。

マドレーヌだった。拾って、男の子に手渡す。
「美味しそうだね」というと、ニッコリ笑って落ちたマドレーヌを受け取り、さらに袋の中を見せてくれる。「こんなにあるんだよ」

「いいなぁ。どこで食べるの?」と聞くと、少し考えてから、改札口の向こうを指差し、「あっちに行くとベンチがあるからそこで食べるんだ」と何だか誇らしげ。

それだけ言うと、お母さんのほうに走っていった。
ふぅん、今すぐ食べるのは止めたんだな・・・と思うと何だかおかしかった。
電車に乗ってから、気がついた。
今の場面はまるで、コーチングみたいだった。
彼はそれまで駄々をこねいたけれど、他の人と話しをしたらちょっと気分が変わっで、冷静になって、お母さんの言うとおりにベンチで食べることを自分で決めた

「どこで食べるの?」という一言の質問で、多分彼の中で考えたんだろう。

いますぐ、食べるっていったら、ちょっと恥ずかしいかな、とか、お兄ちゃんだからベンチで食べたほうがいいな・・・とか。
その中で最も良いと思われる回答がきっと、「ベンチで食べる」だったんだと思う。

考えるのも決断するのも自分。
冷静になるための一呼吸を与えるのがコーチ。
迷っているクライアントにアドバイスすることもできるけれど、最後の決断は自分だ。
自分で自分にとっての最良の道を選ぶためのツールの1つがコーチングなんだな。

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