メトロポリタン美術館 古代エジプト展 女王と女神

メトロポリタン美術館 古代エジプト展 女王と女神 

随分と久しぶりに上野にある東京都美術館に出かけてきた。
目当ては、「メトロポリタン美術館 古代エジプト展 女王と女神」。期待は少しも裏切られなかった。

あちこちに飾られるポスターの主役は、ハトシェプスト女王像の頭部。
一番最初に展示されているこの像は、静かで本当に美しい。

展示作品は、一部の復元品を除いて、ほぼ全てが紀元前のもので、その美しさもオーラも全く損なわれていないことに驚かされるが、一方で、これだけ美しくて魂のこもったものを破壊するのは、特に戦車や爆撃機が無い時代に行うのは、非常に勇気のいることだったのではないかと思う。完成度の高さが作品のそれぞれを守ったのではないか…と感じるのだ。

ハトシェプスト女王葬祭殿を復元したものの展示と発掘現場のフィルムが流されているのだが、この建物が非常に優美で圧倒される。
直線、対称性、そして施された絵と彫像。思い起こしてもどこにも突飛なものも、奇抜なデザインもないのだが、世界のあちこちの神殿などを思い浮かべても、これだけ心惹かれるものを思い浮かべることはできなかった。
紀元前にこれだけのものが作れるということにも、もちろん驚かされる。

非常に印象に残った展示は、「イシス女神とアシュートのウプウアウト神の像」という男女の神様の対になった像。
エジプト古代にはたくさんの神様がいたようで、その中には動物の顔を持つものや、太陽円盤を持つものなど独特の迫力があるものがたくさんあった。
一神教の前にある多様な神々を信仰する世界はいつも私をひどく惹きつける。特定の信仰をもっているわけではないが、どうにもこうにも一神教というのが受け入れ難いのだ、私には。

王族の女性たちが愛したアクセサリーは、現代の目から見ても少し古びていない。(重そうで実用的ではなさそうだが…)
人は古代から美しいものが好きで、美しいと五感で感じるものは数千年を超えてもあまり変わらないのか…、それとも、こういうものが美しいという概念を文化的に継承していて、それで美しく感じるのかよくわからないが、美しいものを近くに置きたい、身につけたい…というのは古代からずっとあるのだなと思う。
細部の仕上げの丁寧さとこだわりが素晴らしかった。

来世への信仰については、知らない部分が多くて興味深かった。
ミイラとたくさんの贅沢な埋葬品というのは、天国での地位のためのものかと思っていたが、どうも生まれ変わったときのためのものという色合いが濃いようで、元のカラダに戻るのに、爪を保護するための金で出来た爪サック、脳みそは腐らないように鼻からかきだしておく話(古代エジプトでは脳は大切なものではなく、むしろ心臓が人間のメイン機能だと思われていたそうだ)、内臓は出しておいて、これまたゴージャスな入れ物に別に入れておく話など、解説を読んではいちいち頷いてしまった。
どれもこれも生まれ変わったときのためのものだ。

東京都美術館がいつもそうなのかよくわからないが、作品を観ながら座る場所がほとんど無いというのは、ちょっと残念だった。
少し離れたところで座って作品を観るというのは、とても楽しいことだから。
ミュージアムショップももうちょっと見やすい広さがあると良いなぁ…と、テーマがもうちょっと絞ってあっても良いかも。ミュージアムショップ大好きなので、ここはぜひとも充実して欲しい。

最近は音声ガイドが流行りでよく見かけるが、音声ガイドのところにだけ人が溜まってしまうのはちょっと残念な気がする。

子どもたち向けにその場で絵を書いては消せる磁気式お絵かきボードが提供されてるようだが、なんといっても一色しかないし、基本的にはその場で消えてしまうのでちょっと残念。
パリの美術館だと子どもたちはめいめいにスケッチブックを持ったり、大人が作品を模写したりというのを見かけるが、日本では見たことがないなぁ。作品保護のためなのかもしれないが、他国でできるなら日本でもできそうな気もするのだが…。

久しぶりの上野公園は、忘れていたけれど文化施設がたくさんあって、家から30分圏内。
そうか、時間ができたら上野にきてみれば、何かしら観たい展示会はあるだろうし、緑はあるし、公園は広いし…でなかなか良いスポットだなと改めて見なおした。

ビジネス書よりもアートのほうが、ビジネスの発想と展開に効くような気がする…最近。
すぐにその場で良いアイデアが浮かぶわけではないのだが、自分の中に種が蒔かれたような気がするのだ。発芽の時期はさっぱり見通せないが、それがそれでまた面白い。

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