すばらしい新世界

相変わらず池澤夏樹の本が好きです。
新聞の書評欄に「光の指で触れよ」が取り上げられていて、この作品が「すばらしい新世界」の続編だということで、改めて「すばらしい新世界」を読みました。

主人公は風力発電技術者でヒマラヤの奥地に風力発電設備を作る。奥さんもボランティア活動や環境問題に非常に関心が高い人、小学生の息子は今の教育制度に若干なじめない部分もあるけれど元気で、3人のとてもいい家族。
旅が中心なのは、もちろんだけれど、社会的問題について夫婦間でシリアスに議論したり、主人公が不思議なできごとにあったり、なかなか山あり谷ありの小説で長編とは言え、飽きずに最後まで読むことができます。
(この小説は、途中に筆者自身も出てきたりすることがあったり、取り扱っている社会的問題が非常にたくさんあって、単純に小説とカテゴリしてしまって良いのかちょっと悩みます)

発展途上国におけるボランティア、世界の環境問題、家族のあり方、資本主義経済の問題点、宗教心、仏教、チベットの置かれている状況、・・・・・などなど本当に盛りだくさん。

どの関心からも読める面白い作品だと思いました。

九州の出張からの帰りに飛行機の中で読み終えました。
池澤夏樹の作品は、エッセイも小説もとても旅に適した本だと思いますが、自宅で読んで旅気分を味わうというのも素敵なものです。

Have a nice trip!

「王様は毎日朝早く城壁の回りをぐるりと七回、歩いて回られます。そうやって国の安全と幸福を祈られる」
「お散歩がお祈りなの?」
「そう。それが王様の大事な仕事なんです」

中国も、チベットの仏教の僧は生産に関わることなく民衆の作ったものを奪う搾取者だと言ったことがある。しかし、こうして見ていればわかるととおり、それは違う。畑で働く者は人生を維持し、ひいては次の世代を準備するために働く。寺で祈る者は、その人生や次の世代の意味を明らかにするために知的に働く。
(中略)
ここの農民たちは苦労して育てた子供の一人を、労働力として使うのではなく、僧となって人々を救う仕事に就くよう、寺に入れるのだ

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