決定力 正解を導く4つのプロセス

「スイッチ!」「アイデアのちから」でその力を見せつけてくれたハース兄弟がまたまたやってくれたのが、この本「決定力 正解を導く4つのプロセス」。
いやぁ、もう出る本出る本、ハズレなし!買って後悔なし!というのがすごい。

前作2作には、読んだらすぐに実践してみたくなることが満載だった。そう考えるとこの本はちょっとこの本はインパクトが薄いかも。
私も1度目読んだ時には、「なんだかハース兄弟も、パワーが落ちたわねぇ…」などと嘯いてしまった。
今回、再読してそのような傲慢な態度をすこぶる反省している。「本当に申し訳ありませんでした。これは一生モノです。ぜひぜひまたこのような作品をお願いします…」ということで土下座状態ある。

前作に比較すると、この本はやや専門用語(造語?)が多いし、じっくり読まないとならないが、それだけの価値は充分にある。
何しろこの本を読むと、あらゆる場面であなたの下す決定の質は著しく上がるのだから、多少の困難に立ち向かっても、損はない。

決定を間違えることが、人は往々にしてある。
それが嫌だから、物事を決めない人というのは非常に多い。
これは決定すべきことが複雑だからとか、重要事項だからとか、決断に慣れていないからということだけではない。
常に決断を迫られる経営幹部も往々にして決定しないでおくことが多いし、ささいなことであっても何でも決めることを先送りしたい人というのは結構いる。

もしも、正解の決定を選べるというプロセスがあったら、あなたは飛びつきたくないだろうか?
このやり方は、ビジネスにも、プライベートにも、人生のどこにでも応用が効く。
もし正解が選べなかったとしても、このプロセスを通じていれば、誤った決定が引き起こすリスクも最小限に留められるはずだ。
そんなプロセスをぜひ知りたいでしょう?
じゃ、この本を読んでみましょう。絶対に損はない本だから。

さて、本書の内容に入ろう。

まずこの本では、間違った決定を下しやすくする意思決定の4つの罠についての説明が行われる。この4つの罠を知りそして憶えておくだかけでも、あなたの意思決定は30%正解率が上がる。(当社比)

【意思決定の4つの罠】
第一の罠 視野狭窄
第二の罠 確証バイアス
第三の罠 一時的な感情
第四の罠 自信過剰

ざっと見た感じで、言葉がやや難しい印象を受けるかもしれないが、内容はどれも頷くことばかり、第一の罠「視野狭窄」というのは、ついつい私たちは物事を決めるときに「〜べきか否か」形式の意思決定をしようとするが、よく考えるとそれ以外の選択肢も往々にしてあることが多い。でも、ついつい視野を狭めがちになってしまう、これが「視野狭窄」。

第二の罠「確証バイアス」は、私たちがあることを正しいと思い込むと、そのことが正しいということを裏付ける情報ばかりを探し集めてしまうという厄介な習慣だ。恐らくあなたにも心当たりがあるだろう。

尚、確証バイアスに興味がある人は、カーネマンの「ファスト&スロー : あなたの意思はどのように決まるか?」が超お薦め。
ファスト&スローはこれまたスゴイ本で、実験結果が色々とまとまっているため研究色が強く決して読みやすい本ではないのだが、意思決定についての色んな本のベースになっている理論であり、様々な本に参照されている本である。ここで紹介している「決定力」もかなりこの本をベースにしている。
いわゆる元ネタ本。様々なところで参照されている元ネタ本はやっぱり一度は読んでおきたい。

第三の罠「一時的な感情」は、そのまま言葉の通り、論理的に考えるとAを選ぶべきであると明確な場合でも、感情的にAを選べずBを選んでしまうことって結構ある。

第四の罠「自信過剰」。私たちはついつい未来の予測に根拠の薄い自信を持ってしまうことが往々にある。

ここまでお読みいただくと、ああ、確かにそういうのってあるなぁ…と思われることばかりでないだろうか。

この4つの罠を避けるためにプロセスが、以下のWRAPプロセス

【WRAPプロセス】
W 選択肢を広げる Wide Your Options
R 仮説の現実性を確かめる Reality-Test Your Assumptions
A 決断の前に距離を置く Attain Distance Before Deciding
P 誤りに備える Prepare To Be Wrong

WRAPプロセスを使うことで、私たちは格段に決定の質を上げることができる。
それぞれの詳細な方法は、本書をぜひお読みいただきたい。

私が特に印象に残ったのは、どうやって一時的な感情を乗り越えるかという説明がある第8章。
私はかなり一時的な感情に流されて、決断を急ぐタイプなので、このアドバイスは非常に効いた。

親友が同じ状況にいるとしたら、なんとアドバイスするか?

私たちの意思決定は次のふたつの繊細な感情によって歪められることが多い。
① 単純接触効果:私たちは馴染みのあるものを好む
② 損失回避:利益の喜びよりも損失の痛みのほうが大きい。

WRAPプロセスに基づくアドバイスはたくさんあって、どれも一度に憶えて、それらを常に実践するのは難しいが、1つか2つのアドバイスを取り入れるだけでも、あなたの意思決定プロセスは大きく改善するはずだし、知識としてこれらを知っているだけで、立ち止まるべきポイントが見えてくるし、まわりまわって意思決定も早くなる。

私は本書を書籍で読んだが、Kindle版も出ている様子。図表などはないので、Kindle版でも充分読めると思う。
購入を迷う方は、ぜひ書店で手にとって、各章ごとにまとめが付いているので、それを読んでみるのが良いと思う。尚、著者のサイト(英語のみ)にもこの本についての色んなリソースがあるので、英語の得意な方はまずはこちらを読んでみてからでも良いかな…と思う。

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