So what?という文化

5年近くいた外資系企業を先日退職しました。
派遣社員で短期間外資系の会社で働いたことは何度かありましたが、正社員で長期に渡って外資系で働いたのは、この会社が初めて。
それはそれは色々なカルチャーショックを受けました。

後半は主にプロジェクトマネジメントを担当していましたので、かなりの時間でアメリカ本社のメンバーと仕事をすることが多く、その中で非常に勉強になったと思うのが、「So What?(だから、何?)」という考え方です。

例えば、あるプロジェクトの中で、担当者であるXが進捗をきちんと報告してこないために、その周辺にあるタスクが止まってしまうとします。
日本企業にいる際には、関係者に「Xが進捗を報告しないので困っている」という話を雑談形式でもしておけば、皆がフォローして動いてくれるというのがありました。
まずアメリカとの仕事で私はこういったことを経験したことはありません。

まず最初に、私は特定の人にこの話をしなくてはなりません。
大体の場合はXの上司です。
上司も駄目な場合はそのプロジェクトの責任者を探し出し、話す必要があります。
単なる関係者に話しても、それが彼らの仕事でなければ「ふーん、大変だね。でもそれなら、Xの上司に話したほうがよいよ」と言われるだけです。

日本企業にいるとこれはまるで「チクリ(密告)」のようで非常に気が引けるのですが、アメリカの企業はこれをエスカレーション(escalation)と呼びます。
もしも私がこの問題を放置しておけば、エスカレーションしない担当者(つまり私)のほうが問題があるとみなされます。yoshikooは問題に気づかなかった。
もしくはに気づいていたのにエスカレーションを行わなかったと判断されます。

さて、それではエスカレーションを行います。
このときの話で「Xが進捗を報告しないので困っている」というだけでは、駄目なのです。
そんなことを言えば、「So What?」と聞かれます。
「それでどうしたいの?」と私に聞いているのです。
つまり、「yoshikooは担当者として、その問題をどう処理するつもりで、自分に何をどのように協力して欲しいのか?」と必ず聞かれるのです。

そこまで考えてようやくプロジェクトを責任持ってマネジメントしているとみなされます。
問題をあげれば、上が解決してくれるという考えは駄目なのです。

日本企業では相手のしたいこと、言いたい事を「察する」というのができるというのは、非常に高いビジネススキルだと思われますが、アメリカではこのような意味での「察する」というのはあまり無いようです。

この「So What?」の考え方は、私には非常に新鮮でした。

プライベートでも、何か不満のある時は、「で、どうする?」と自分に問うようになりました。

次の転職先では、業界も職種も変わるため、非常に勉強が必要ですが「時間がない~」とついジタバタと考えてしまいます。
そんな中でふと「So What?」と考えると、自分でわかっていて選んだ道なんだから、しばらくは他のことは止めて頑張るしかないじゃん、足りない知識は計画的に本を読んで習得しよう・・・とちょっと前向きに考えることができるのです。

煮詰まったら、「So What?」をちょっと考えてみてください。
この考え方が身につくと、悩むだけではなく、その悩みを解決するために何をするか?というのを反射的に考えるようになり、ぐるぐる回っている思考から一歩抜け出せます。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

  1. NO IMAGE
  2. NO IMAGE
  3. 2017.05.17

    minutes No.18

コメント

  1. ピレネー

    フランス語でも、同等の言い回しがあり、"Et alors"といいます。だから何?みたいなものです。
    これを言われないためには、問題がある場合には、状況説明した後、間髪おかず解決策または提案をするのではなく、一呼吸おいてから、「ところでこの件について私なりの提案があるのだけど聞いてもらえますか?」といってから、相手が「もちろん(と大体答えます)」といった後、(私の場合)いっきにまくしたてます。
    これを年中やっていると、私生活においても、だから何?とすぐやってしまい、子供にもやるのでいやがられます。
    ところで、相手がフランス人だと、"Et alors"といっても、"Rien a faire(どうしようもないよね)”みたいに切り返されるときもありますが。

  2. ピレネー

    先に書くべきでしたが、転職されるということで、新しい職場でご健闘される一方、充実したプライベートをもてるようになることをお祈りしております。

  3. yoshikoo

    コメントありがとうございました。
    私は子供にはやらないんですが、必ず部下には「だから何?」とすぐやってしまいます。
    すっかりこういう性格と物言いになってしまい、次は日本企業なのでちゃんと「和」に溶け込めるか、かなり不安だったりします(笑)
    いやぁ、やっぱりピレネーさんとは一度じっくりお話したいです。できればお酒の入る席で。
    確か子供の年齢も同じ年なんですよね。

  4. はじめまして。まずは転職おめでとうございます。
    こちらのページを興味深く拝読させていただいています。コーチングはある種の心理療法に似ているなと思っておりましたが、この方法の趣旨はある心理療法でも使っています。SO WHAT?とは聞きませんが、「どうなると良いと思いますか?」などと聞くことで目標設定し、それに向けての具体的方法を考えていきます。集団でやると効果的であることも多いです。

  5. yoshikoo

    はじめまして。コニーさん。
    お返事が遅くなりまして失礼しました。
    心理療法というのは、私はよくわからないのですが、何かの治療のために行うのでしょうか?
    集団に対するコーチングというのに、このところ興味を持っています。グループコーチングというのは、本でもなかなか見つからないので実践を通して身につけるしかないかなと思っていたのですが、
    心理療法の集団向けのを参考にしても良いかもしれませんね。貴重なヒントを有難うございました。

  6. コニー

    お返事が遅くなりこちらこそ失礼しました。
    心理療法は、不健康な状態を健康な状態にすること、健康な状態を維持できるような根本を作る(修正する)こと、不健康な状態を予防すること、といった目的で行われますので、かならずしも病気がある人が対象ではありません。
    集団では、いかに集団の参加者間のやり取りを活性化させ、集団のもつパワーを利用し、参加者たちがその効果を享受するか、ということが大切かと思います。集団でコーチ対参加者の一対一発言より、コーチが他の参加者の発言を促すことで集団のやり取りが増え、お互いがお互いを励ましたりアドバイスするような効果が生まれやすくなると思います。そのためには集団の枠組みやルールをはっきりさせておくことも必要かと思います。
    きっとすでになさっていることだと思いますので、失礼いたしました。

HTMLタグはご利用いただけません。