季節のうた

愛読しているお料理ブログがいくつかあります。
中でもこのところ、お気に入りなのが、「ばーさんがじーさんに作る食卓」
書籍化もされているようなので、ご存知のかたも多いと思います。
こちらのお料理メニューがいつもとても美味しそうで、愛情たっぷりで、そしてお料理することも食べることも好きなんだなぁというのがよく伝わってきます。文章もとても温かい。

こちらのブログの中で登場した本が、佐藤雅子さんの「私の保存食ノート」。
どんな本だろうとAmazonのレビューをのぞいてみたら、レビューを読む限り、とても私好みの本だということがわかりました。
長年愛されている保存食のレシピも気になりますが、著者の佐藤雅子さんご自身も読者のレビューを読む限り、とても素敵な方のようなので、同時にエッセイである「季節のうた」もポチッとして、2冊同時にAmazonから購入しました。

お正月前に届いたので、保存食作りはまずはおせち料理が終わってからと後に回し、先に「季節のうた」から読み始めました。
ゆっくりと流れる文章のリズムがとても良いので、寝しなにベッドで読む本に早速決定。

寝る前は、ビジネス書や展開が早く続きの気になる小説よりも、気持が穏やかになって、幸せな夢が見られそうなこういう本を読むことにしています。

著者である佐藤雅子さんのプロフィールは、以下の通り(「季節のうた」より一部抜粋)

1909(明治42年)、東京・小石川生まれ。
府立第二高等女学校卒業。31(昭和6)年、元人事院総裁である故佐藤達夫氏と結婚。
母と、お姑さんのしつけのもとで会得した保存食をはじめとする料理を、主婦業のかたわら雑誌新聞などで披露した。
また、趣味の木彫、彫金は、素人の域を脱した腕前だった。

エッセイの中にも出てきますが、ご主人は憲法の草案にも携わったすごい方だったようで、多分今で言うセレブな奥様だったのだと思いますが、戦争中のお話などを読む限りご苦労されたことも多いようです。それにやっぱりお料理道具一つとっても時代が時代ですから、かなり時間がかかります。

そう考えると、レンジ、圧力なべ、炊飯器なんてものがあり、もちろん冷蔵庫は使い放題なんていう今の料理は、お手伝いさんを一人雇ってお料理しているようなものかもしれません。

お料理だけでなく、この他にも浴衣ののりづけの話などの手間に驚愕しました。なにしろ、御飯の洗い流しでのりづけするのです!(「浴衣を洗う」)

文中に「台所をあずかる」という言葉が出てきますが、いい言葉だなとしみじみ思いました。
家族の健康と家計を一手に預かるというのは、家庭にとってとても大切な仕事だということを改めて思い出しました。

このところ、あちこちで主婦(主夫含め)不要論みたいなのをよく見かけますが、個人的には家庭内のことがきちんとしているというのは、やはり家族全員が安心して帰宅できる場所を作ることであり、人の営みとしてとても大切な仕事だと、しみじみ思う今日このごろです。
(そのような場を作るのが、男性であっても女性であっても、どちらでもいいと個人的には思っています)
私などは母もずっと働いていますし、私自身もずっと外で働いているから、逆に尚更そういう実感があるようです。

お料理に関する様々なレシピ、アイデア、ヒントを読むのも楽しいのですが、丁寧に手間を惜しまず楽しんで家事をされている姿がとても読んでいて気持がいいです。

自分の周囲にこういう女性がいたら、私もひょっとして専業主婦を目指していたかも…なんていう妄想までしてしまいました。

お料理が上手な友人は私の周囲にも男女問わず、たくさんいますが、食後のデザートまで普段の食事作りの中で作っている人というのはおそらくいないような気がします。
今の時代から見ると、これはとても贅沢なように思いますが、当時はそれが当たり前だったのかもしれません。

ちょっと家事に対して、モチベーションが下がったときに読むと、やる気が出てその上家事そのものが楽しめるようになるエッセイでした。

作ることそれ自体に楽しみを見つけ、与えられるより、与える喜びにひたれること、これこそは、台所仕事をあずかる者の生きがいでございましょう。
「玉砂利と涙」より抜粋

お正月も終わりましたし、私も少しずつ、保存食のほうも手を出してみようかと思います。

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コメント

  1. いつも見てます

    いつも見てます。今回は「玉砂利と涙」より抜粋の、
    「作ることそれ自体に楽しみを見つけ、与えられるより、与える喜びにひたれること、これこそは、台所仕事をあずかる者の生きがいでございましょう」が胸に刺さりました。

    いつも時間をかけて読まれた本を丁寧な注釈をつけてご紹介いただいて、申し訳ない気持ちです。
    でも読書が苦手な私には本当にありがたいし、yoshikoo さんの着目点と解説は、私や私の家族にとても新鮮で強烈な印象と影響を残します。
    先日の「お金持ちはなぜ靴をピカピカに磨くのか」について書かれた文章で、その日を境に支出に関する意識と行動が変わり、月の支出額を大幅にカットできるようになりました。何より何を言っても受け付けなかった夫の意識と行動がが途端に変わりました。これまではストレスのかかる散財だったことに気づかされました。
    挙げたらキリがないのですが、どうか今後もyoshikoo さんの出し惜しみの無い淀みない文章力で続けてください。
    GTDについてももっと頑張らずに続けられるように頑張ります(笑)

  2. yoshikoo

    コメントありがとうございました。
    いつも読んでくださっている方がいるというのは、本当に嬉しいことです。
    しかも、それが何かのお役にたっているということ、そしてそれをお時間を割いて伝えてくださる方がいるというのは、書き手としては本当に励まされるものです。

    Money Managementは腑に落ちると、行動にしやすく、そして行動してみるとすぐに結果が出るのが面白いですね。私も苦手で逃げ回っていましたが、昨年ぐらいから少しずつ行動に起こせるようになったおかげで、自己肯定感みたいなものが高まった気がします。

    本はここ数年読み散らかしてばかりで終わっているので、今年はなるべく感想をあげていきたいと思っています。
    GTDは、私自身も本当に試行錯誤で、何度も中断しては戻ってというのを繰り返しています。そんな話もぼちぼち書いていきます。こちらも何かヒントになればうれしいです。

    • いつも見てます

      コメントありがとうございます。
      英語についてはもう諦めませんか?についても書かれていましたが、自己肯定感というのは、人生のターニングポイントで大きなキーワードになると思いました。

      私はyoshikooさんと年齢も近い40代ですが、自己肯定感をもっと若い時から持てていたら、今はもっと違っていたかもしれないと思いました。
      といっても若い頃の自信の無い時期が無ければ、スキルを伸ばす努力もせずに勘違いな大人になってしまう、とも思いますが。

      • yoshikoo

        自己肯定感の素晴らしいところは、自分で小さなことを少しでも成し遂げていくことで、どんどん高めていくことが可能なところだと思います。
        いきなり、大きな目標を達成するよりも小さいことからコツコツと。貯金に近いかもしれませんね。気がついたら、「残高結構溜まっていた…」⇒「あ、私、結構、今の自分のこと好きだわ」みたいな(笑)

        傍からみて、勘違いな人というのは、よくよく見ていると多分ご自身もうっすら気づいているのではないかな?と思うことが多いです。
        でも、それと向き合う強さがその時点で発揮できなくて、繕い繕いを重ねて土台に手をつけない、対処療法になってしまっているような気がします。。

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