天才たちの日課

天才たちの日課 

「天才たちの日課」は、作家、画家、音楽家、その他クリエイティブな仕事で才能を発揮した人たちの日々の日課をまとめた私のお気に入りの一冊だ。
副題は「クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々」。
原題は「DAILY RITUALS: How Atists Work」。

この本のベースは、著者メイソン・カーリーの運営するブログDaily Routines が元になっている。
こちらのブログにはクリエイティブな人に限らずいろんな人の日課が投稿されている。

最近、なかなか面白いものに巡り会えないのだが、私は人の日記ブログを読むことが好きだ。
なかでも毎日ハプニングが起こったり華やかさのある日々を送る人よりも、ごく普通の平凡と形容されるであろう人の淡々としたものが好き。
普通の日々にあらわれるちょっと嬉しいこととか、びっくりしたこと、愚痴なんかを読んでいるとものすごく感情移入してしまうタイプだ。

私はできるだけ決まりきった毎日を送りたいタイプだ。
同じ時間に起床し、似たようなパターンの食事をし、決まった時間に仕事や家事をして、決まった時間にそれらを終えて、決まった時間に床につくというような‥。
でも、48年間そのような期間はほとんどなかったし、今も羨望し続けていて時々チャレンジしてはいるが、ノイズが多く忙しない東京のしがないフリーランスにそんな日はやってきそうにない。

この本の中には私のそういった憧れを実現してきたアーティストがたくさん登場する。アンソニー・トロロープやカール・ユングの暮らしなどはとても心惹かれる。
一方で、ものすごく不規則な生活を送るタイプのアーティストもたくさん登場する。仕事の時間がとても長い人もいれば、短い人もいる。
どうやら、こういうパターンで暮せばクリエイティブな人になれるというものはなさそうだ。(そんなパターンを見つけようと思う時点でクリエイティブにはなれないのかも)

私がもっとも関心を寄せているのは、私自身が日々悩んでいる問題、つまり、意味のある創造的な仕事をしながら生計を立てるには、どうしたらよいかという問題だ。ひとつの課題に全身全霊で打ちこむのがよいのか、それとも毎日少しは息抜きしたほうがよいのか? 自分が成し遂げたいことをすべてやる時間がないときは、ほかのこと(睡眠や掃除や生活のための仕事など)をあきらめるべきなのか? それとも、少ない時間で多くのことができるように仕事の密度をあげることはできるのか? 私の父親がよくいっていたように「一生懸命働くんじゃなくて、うまく働く」ことは可能なのか? もっとはっきりいうと、創造性と快適さは両立しないのか? それとも逆で、創造的な活動を続けていくには、日々の暮らしがある程度快適であることが必要なのか?

上記は、この本の著者による言葉だが、私たちは同じようなことを知りたいがために、仕事ができるようになる本やそれに類似するHow to 記事を熱心に読んだりしているのだろう。
そうして、この手の記事や本を読むたびに真逆のことをいう人々に逢い、戸惑うことも多い。

この本の中にも作品を生み出すための色々なパターンがある。
どうやってその仕事を完成させ、椅子に自分を座らせて、自分を仕事に取り組ませるかをいろんな時代の人物が行ってきたかが見えてくる。
ときにニヤリとする部分あり、ときに「うーん…」と唸る部分あり、自分が煮詰まっているときに、ちょくちょく気分転換にこの本を読む。

おかげで紙の書籍を持っているのに、電子版も買ってしまった。(最近、このパターン急増)

「私は夜明けとともに起きるのが好きなの」アメリカの女性画家オキーフは一九六六年にインタビュアーにそういっている。「犬たちが私に話しかけはじめると、火をおこして紅茶をいれ、ベッドの上にすわって、太陽がのぼってくるのを見る。朝はいちばんいい時間。あたりに人がいないから。私が感じのいい人間になれるのは、あたりにだれもいないときなのよ
ージョージア・オキーフ

 

ヘミングウェイは毎日、書いた語数を表に記録していた。それは「自分をごまかさないためだ」という。執筆がうまくいかないときは、さっさと切りあげて、手紙の返事を書く。それはいい息抜きになった
ーアーネスト・ヘミングウェイ

 

ミラーには、午前中の二、三時間でじゅうぶんだった。しかし、決まったスケジュールを守ることが毎日の創造的なリズムを作るためには重要だと強調した。「優れた洞察力が働く瞬間瞬間を維持するには、厳しく自己管理をして、規律ある生活を送らなければならない
ーヘンリー・ミラー

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