「女性の活用」という言葉は、今や何となく古めかしい言葉のように感じられるが、そうは言っても周囲を見渡していれば、相変わらず女性管理職の数は少ない。
就業機会は開かれたとは言え、昇進機会は閉ざされたままだというが日本の社会で仕事をしていての実感だ。
しかしながら、玄田有史氏の「働く過剰 大人のための若者読本」によれば、2000年より女性活用が企業の業績に結びつくという調査がいくつか発表されてきているようだ。
私自身が、10年近くアメリカの企業にて働いていて感じるのは、女性の生産性が非常に高いため、企業が就業機会を与えることで、その企業が伸びるというよりも、女性とともに働くとコミュニケーションがオープンになることが、結果業績向上につながるのではないかと考えている。
同人種の片側の性だけになると、(白人男性だけとか、日本人男性だけとか、おそらく日本人女性だけも、多かれ少なかれ同じような現象が起きると思う)、思考パターンや生育環境のの方向が似ているために、「言わずもがな」とか「空気を読む」という現象が生まれてきて、その共同体の中で暗黙知や隠語というのが横行するようになる。
女性で、現在昇進機会を得ている人というのは、男性が(ごく自然発生的に、つまり意図的ではなく)作り上げたこの隠語や暗黙知に対しての理解が早い人が大多数である。
しかし、大多数の女性は、このような隠語や暗黙知に対して居心地の悪さを感じ、長く続けば、むしろそれは馬鹿馬鹿らしさを感じるようにすらなり、モチベーションを下げる。
なぜなら、それはとくに生産性を上げるために必要なのではなく、(意図的ではないにせよ結果としては)単純に新たな人種や性別を排除するだけためのものであったり、これまでの既存勢力の共同体維持のためだけであったりすることが多いからだ。
このような隠語・暗黙知にあふれた職場で、本来の仕事以外の部分で疲れることを厭い、多様な人材の活躍する外資系企業に転職したり、自分で事業を始めたりという道を選択するというケースも非常に多い。
企業が多様な人材を活用しようと思えば、この暗黙知と隠語をなくす必要がある。
これが無くなると、自ずとオープンなコミュニケーションと情報活用が生まれる。
このことによって、これまで本流ではなかった女性にも活躍の場が生まれてくる。
この効果は、同性とは言え、これまで実は暗黙知と隠語を理解していなかった入社したばかりの男性や、その会社のカルチャーへの理解の浅い中途入社の社員などにも急速に広がる。
情報共有が自然に行われ、コミュニケーションが全ての層に行われるようになると、同性間では暗黙で通じあっていた摩訶不思議な言い訳が出せなくなり、従業員は自ずと自身の生産性に目を向けるようになり、結果業績が向上してくるというのが、女性活用による業績向上のひとつの理由ではないかと思うのだ。
人材の多様性をうまく活用している企業には、根底に「フェアネス」の文化がある。
様々な会社で働いた経験からそう感じている。
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