逗子日記:二〇二四年八月 寒蝉鳴 (ひぐらしなく)

4時頃目を覚まして、布団の中でぼんやりしていたら、夫が下から上がってきた。
このタイミングで灯りをつける。
雨戸が閉めてある部屋は光がまったく入らない。

8月の頭にコロナを発症して、今日で丸一週間+3日目。
その間、1階と2階で寝室を分けている。
今日あたりから、また一緒に寝ようという話になる。
夫婦で寝室を分けたら終わりのサインだ…というのは独り寝は快適過ぎて、同室には戻せなくなるからなんだろうな…と思い、うっすら口元がゆるむ。
確かにそろそろ戻さないと…

夫がくるみ(ミニチュア・シュナウザー 6歳)を散歩に連れて行ってくれている間に、寝床で村上春樹の「猫を棄てる 父親について語るとき」を読む。
母親が購入したものをもらってきた本だ。
あっという間にこの作家のいつものリズムと言葉選びに引き込まれる。

この人の本を一番最初に読んだのは、「螢・納屋を焼く・その他の短編 」新潮文庫版のもので、実家のあった団地の本屋で購入したもの。
繰り返し読む1冊になったけれど、さしたる特徴のない作家の名前は記憶に残らなかった。
1980年代はインターネットもないので、良い本だなと思っても、その作者を調べるという手段はそう手軽ではなかった。

高校生のときに、「ノルウェイの森」が大ベストセラーとなり、緑と赤の上下巻が一斉に本屋の平棚に積まれた。
友人が「知ってる?超エッチで面白いんだよ」といって、押し付けられた2冊のハードカバーに「蛍」のエピソードがあり、それが村上春樹という作家の名前を認識した最初の体験だった。

そこからハルキストというのか村上信者というべきなのかよくわからないが、すでに出版されていた文庫版はすべて読み、それ以降の本はエッセイを含め発売初日にすべてハードカバーで買って読んだ。
Wikipediaの作品一覧を眺めると、おそらくそんなふうに買って読んでいたのは、1999年に出版された「スプートニクの恋人」まで。
「ねじまき鳥クロニクル」で感じた違和感、おそらく主人公が名前を持つようになった頃から熱が引いていくように、特別の作家ではなく、私にとってハズレのない作家の一人になってしまった。

今でも村上春樹の作品は読むし、発売日ではないけれど買うことも多いし、好きな作家だ。
でも話題になった「街と、その不確かな壁」すら未だに読んでいない。大好きな「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」の続編だと聞いているのに。
うまく言えないが、この人の書く主人公が「やれやれ」と思うタイミングが、私の「やれやれ」がズレてしまったようだ。
多分、今後の作品でもそこがピタリと合うことはないんじゃないかな。
とても残念ではあるけれど。

15分ほどヨガをして、雨戸と窓を開けて空気を入れ替える。
洗濯機を回して、今日は燃えるゴミの日なので、ゴミの用意。

朝食後に、ご近所さんが八ヶ岳で収穫してきたという大きな白菜を1把とキャベツを1個届けてくれる。
どちらもとても立派。
熱中症警戒アラートが出ているけれど、この白菜を美味しいうちに食べるにはやっぱり鍋物になりそう。冷房をかけながらの鍋というのも贅沢だ。

3時間ぐらいパタパタ動くとまだ疲れやすいので寝室の布団で横になる。
この部屋は風が抜けるので今日のように風が強い日はクーラーをつけなくても十分に涼しい。

玄関前も車が通るし、庭の前は集合住宅の駐車場があるけれど、どちらもスピードが出せないからなのか、車の音はほとんどしない。
時々、逗子の海水浴場のアナウンスがぼんやりと聞こえてくる。
今は向かいの学校も夏休みでとても静か。
いい場所にある家だな…と改めて思う。

丸々一週間以上寝込んでいたわけだから、仕事は山ほど溜まっている。
もう優先順位をつけて…という段階は、過ぎてしまっているので、とにかくどんどん片付ける。
本日更新されたしいたけ占いを見ると、計画をしっかりたてて、みんなと共有してみたいな話が書いてあって、共有する相手がいないんだよねぇ…となる。
とはいえ、タスクがあまりに多くなってきたので、一人で全部やるとはいえ、さすがにガントチャートを引き始めた。
こういうのは手を動かし始めると、忘れていたことが山ほど出てくるので、やっぱりやったほうが良いのね、という結論に

集中し過ぎたのか、14時ぐらいにひどく疲れてしまったので、コーヒーを淹れて少しだけ読書。
夫は食材の買い出しに出かけたようだ(なぜ一番暑い時間に?)

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病後で疲れやすくはあるが、薬を全くのまずに熱が下がったおかげで、カラダが妙にスッキリしている。
野口晴哉の「風邪の効用」の本の通りで、特に何もせずただただ休むことで風邪を治すと、デトックスしたような感じになる。
とはいえ、横になってばかりだったので、筋力が落ちているのは否めない。これはこれでなんとかしないと。

ご近所さんから、恐竜のチョコレートのセットをお孫さんたちにどうぞ…といただいたので、娘と孫たちが自転車で取りに来る。
少し立ち話をした程度だけれど、娘も風邪をひいている様子。
小さいこども二人の母親はそれこそただただ休む…というのも難しいだろう。

昨年同時期

逗子日記:二〇二三年八月 寒蝉鳴 (ひぐらしなく)

この時、読んでいた「運動の神話」は上下巻の上しか読み終えていない…。
どうもストーリー性がなく、ボリュームがあり、注釈が多いタイプのノンフィクションの本は電子書籍だとこういうことが起こりがち。
今はスペース気にせず本も読めるようになったので、紙の本が増やせるのがとても嬉しい。
なんといっても、装丁も楽しめるのが良いし、記憶にも残りやすい

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